監修:産婦人科医 柴田綾子先生
「今日のおりものはいつもと違う」なんて思った事はありませんか?実は、おりものの状態で今の健康状態や排卵の時期を知る事ができるのです。
目次
・おりものとは
・おりものの状態と健康状態の関連性
・排卵時期のおりものセルフチェック
おりものとは
腟から出る酸性の分泌液の事を「おりもの」と呼びます。量やニオイ、色には個人差があり、生理周期によっても変化していきます。おりものには「腟内部の潤いを保って粘膜を守る」「汚れを排出する」「バイ菌等が子宮内部に侵入するのを防ぐ」など、女性の身体を守るために必要な働きがあります。
おりものは健康状態や時期によっても変化します。普段からおりものの状態を把握する事は自身の健康状態を知るうえでとても大切です。
おりものからわかる健康状態や感染
健康状態把握のために、正常なおりものと、感染が疑われるおりものの違いをチェックしましょう。
正常なおりもの
正常なおりものとは、半透明〜白っぽい色で卵白のように少し粘り気がある状態を指します。おりものの量はホルモンの影響で変化するため、排卵期や月経期にはおりものの量は増加します。
排卵期や月経期以外でおりものの量が増えた場合は、感染や炎症等を疑う必要があります。おりものの状態別に疑われる病気は以下の通りです。
おりものの中に血液が混ざっている(ピンク色や茶色のおりものの場合)
不正出血のサインとなります(生理直後や卵胞期のおりものであれば血液が混ざるのは普通です)。子宮頸癌/子宮体癌やクラミジア頚管炎/淋菌感染症、子宮頚管ポリープなどの病気が疑われます。繰り返す場合は婦人科で検査を受けてください。
水っぽいおりもの(流れ出る程多い場合)
クラミジアや淋菌などの性感染症や細菌性腟症などの可能性があります。クラミジアや淋菌は悪化すると発熱したり、下腹部痛がみられます。炎症が卵管まで広がると不妊症の原因にもなりますので、早めに検査に行ってみましょう。
くすんだ黄緑色の鼻水の様なおりもの
淋菌感染症、大腸菌などによる細菌性腟症の可能性があります。淋菌の場合は抗生物質の点滴治療が必要になります。
ヨーグルト状のポソポソしたおりもの(痒みがある場合)
カンジダ腟炎の可能性があります。自然治癒する場合もありますが、何度も繰り返して痒みがひどい場合には受診し薬を処方してもらう必要があります。
魚の腐ったようなツンとした臭いがする場合
腟のなかで雑菌が増える細菌性腟症の可能性があります。2〜3日様子を見ても改善しなかったり、症状が強い場合は早めに受診してください。
クリーム色の泡立ったようなおりもの(痒みが強い場合)
トリコモナス腟炎の可能性があります。早めに受診をしてください。
おりもので生理周期がわかる?
つぎに、周期によるおりものの変化について説明していきます。セルフチェックできれば、排卵日だけではなく生理が来るタイミングも予測できることもあります。
生理直後~卵胞期(増殖期)
生理が終わる時期に、脳下垂体から卵胞刺激ホルモンが分泌されます。その刺激から、卵巣にある原始卵胞の1つが発育を始めます。卵胞が発育し、卵胞ホルモンが分泌されると、子宮内膜が少しずつ厚くなっていきます。
この時期のおりものの状態は、サラリとしていて量は一時的に減少し、排卵期が近づくと少しずつ増えていきます。
排卵期
卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンの分泌がピークになる時期です。成熟した卵胞が卵巣から排卵します。
この時期におりものの量はピークを迎えます。ニオイはそれほどきつくないですが、透明のゼリー状のおりものが2~3日続きます。まれに、おりものに血が混じる場合があります(中間期出血)
黄体期(分泌期)
排卵した後の卵胞は、黄体という組織に変化し黄体ホルモンを分泌します。その作用で子宮内膜はさらに厚く柔らかくなっていき、受精卵が着床しやすい準備を行います。
排卵後のおりものは次第に減少していき、白濁した粘り気のある状態へと変化します。生理が近づくにつれ、ニオイがきつくなることがあります。
月経期
排卵した卵子と精子が受精卵となって、子宮内膜に着床すると妊娠が成立します。妊娠がおこらなかった場合は、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌は減少します。子宮内膜は剥がれ落ち、血液と一緒に体外へ排出されます。この一連の流れが生理です。
糸引きテスト
おりものの変化を確認する方法として「糸引きテスト」という方法があります。清潔にした指で腟内のおりものを取り、2本の指の間でどの位おりものが伸びるのかを調べる方法です。排卵直前では量も粘り気もピークになり透明度が増し、おりものは10㎝くらい伸びます。排卵前後は卵白状となり、おりものの伸びは4~5㎝程度です。月経直後ではほとんど伸びません。
まとめ
普段のおりものの状態を知る事は、排卵時期だけではなく、病気の早期発見にも繋がりますので、これを機会にぜひセルフチェックしてみてくださいね。
監修者プロフィール
柴田綾子 (Shibata Ayako) 先生
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医,周産期母体,胎児専門医
2011年群馬大学医学部を卒業後に沖縄で初期研修し2013年より現職。妊婦健診や婦人科外来診療をしながら女性の健康に関する情報発信やセミナーを中心に活動している。
著書:女性の救急外来 ただいま診断中!(中外医学社,2017)、産婦人科ポケットガイド(金芳堂,2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社,2021)
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